Site logo
RYUJU'S CAFE
脚本家・龍樹のオフィシャルHP
© 2012 RYUJU All right reserved.

パリのクルマ事情

 パリの縦列駐車は、ローマのそれと並んで、ちょっとした観光名物だ。クルマの全長より、ホンの僅かでも余白のあるスペースを見つけたら、このときばかりに、ねじ込もうとするクルマをあちこちで見かける。中世の街並みが、いまもそのまま都市として現存するこの街では、当然のこととして碌々パーキングスペースなんてない。だからパリを往来するドライバーは、老若男女問わず、縦列駐車に関しての一家言を持つ事になる。


IMG_6386

 パリの縦列駐車は、ローマのそれと並んで、ちょっとした観光名物だ。クルマの全長より、ホンの僅かでも余白のあるスペースを見つけたら、このときばかりに、ねじ込もうとするクルマをあちこちで見かける。中世の街並みが、いまもそのまま都市として現存するこの街では、当然のこととして碌々パーキングスペースなんてない。だからパリを往来するドライバーは、老若男女問わず、縦列駐車に関しての一家言を持つ事になる。

 前後のバンパーをコツンコツンと当てながら、パズルみたいにスペースを埋めていくやり方はある程度共通するとして、最初のハンドルの切り返しにそれぞれの流儀が出る。ノーズから切り込むか、はたまた、バックでテールから切り込むか。ほとんどのドライバー達は、それぞれ縦列駐車に自信を持っているから、駐車に手間取るドライバーに対して容赦をしない。行く先を塞ぐクルマが一向にスペースに収まる気配がなければ、クラクションを鳴らすかわざわざ窓を開けて罵声を浴びせる(それも、『お前はおとなしくリンゴでも剥いてろ(*注)』みたいに、良く分からない罵り方をする)。達人クラスになると、バンパーが触れるか、触れないかくらいの微妙な間を保って、スルリと滑らかな操作で入れてしまう。こういうのは見ていても楽しい。カフェでのんびり一杯やっていると、たまに目の前で、師範代と呼びたいくらいの縦列駐車を見かける。こんなときは思わず拍手を送ってしまう。すると、だいたいのドライバーはウィンクか何かを返してくれる。これもまた、老若男女問わず。

 こういうときのパリは、ちょっといいなと思う。縦列駐車みたいな日常の些事に、物語が膨らんでいく素地がある。これが東京だと、いくら上手く縦列駐車しても、せいぜい駐車監視員から「ちゃんと300円入れろ」と視線で念を送られるくらいだものね。もちろん、東京には東京の良いところが、沢山あるけれども。

*注
 この罵りは、今回の滞在で聞いたもの。モンマルトルに向かう途中のタクシーの中で。そこまでニコやかに話していた柔和なおじさんが、いきなり血走った顔で窓を開けて怒鳴るんだから、あれにはびっくりしたな。